【コラム】「新NISA世代」と「シニア世代」のリアル——データから見えた証券投資の“落とし穴”と失敗しない心得

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2024年にスタートした新NISA制度をきっかけに、投資を始める人が急速に増えています。2026年7月に日本証券業協会が公表した「個人投資家の証券投資に関する意識調査(2026年調査結果概要)」を見ると、若者からシニアまで、幅広い年代が資産形成に乗り出している実態が浮かび上がってきます。

しかし、そのデータを細かく紐解いていくと、年代ごとに異なる「投資の落とし穴」や「知識や情報の格差」が存在することが見えてきました。自分自身の投資スタイルを振り返りながら、末永く資産を守り育てるためのポイントを考えていきましょう。

70代でも4分の3が「ネット注文」! しかし投信では意外な「窓口頼み」も?

まず驚かされるのは、高齢層におけるインターネット取引の浸透ぶりです。株式取引の主な注文方法を見ると、70代以上であっても約75%(4分の3)がパソコンやスマートフォンを使った「インターネット取引」を利用しています(図表1の水色と青色の合計)。

図表1:株式の主な注文方法

かつてのように「証券会社にお任せ」ではなく、高齢になってもデジタルツールを使いこなして自ら株式を売買する人が主流になっていることが分かります

ところが、これが「投資信託」の取引になると、少し様子が変わってきます

図表2:投資信託の注文方法

若い世代では9割以上がネット証券などを利用してインターネットで投資信託を購入しているのに対し、年齢が上がるにつれて店舗の窓口等での取引割合が増加します。特に70代以上では、銀行や証券会社の「店頭(電話や営業員訪問を含む)」での注文が半数程度を占めているのです。

株式はネットで自ら選んで売買する一方で、投資信託に関しては「金融機関の窓口で勧められるがままに購入している」というシニアの姿が推測できます

シニア層が陥りやすい「投資信託」と「配当金」の勘違い

店頭での購入が多いことと関連して気になるのが、シニア層の投資信託や配当金に対する意識です

図表3:投資信託購入時に重視する点

投資信託を購入する際に重視する点を見ると、高齢になるほど「信託報酬(運用コスト)の安さ」への意識が低くなる傾向があります。一方で、70代以上では「分配金の頻度や実績」を重視する人が増加します

ここで注意したいのが「分配金(特別分配金)」の仕組みです。投資信託の分配金は、必ずしも運用の儲け(利益)から出ているとは限りません。運用の成果が出ていない場合、自分が預けた「元本の取り崩し」によって分配金が支払われているケース(元本払戻金)があります。分配金の頻度や額面の多さだけに気を取られていると、「実は自分の元本が減っていただけだった」ということになりかねません

また、株式の配当金の受け取り方にも見落としやすいポイントがあります

図表4:上場株式等の配当金等受領方法

上場株式などの配当金の受け取り方として、「株式数比例配分方式(証券口座で受け取る方法)」以外の方式(窓口で受け取る配当金領収証方式など)を選んでいる人が、全年代を通して2~3割存在します

もしNISA口座で株式を保有していても、受け取り方式を「株式数比例配分方式」にしておかないと、せっかくの配当金が非課税にならず、課税されてしまうというルールがあります。「窓口で現金で受け取る方が安心だから」といった理由で昔ながらの方式のままにしていると、非課税メリットを自ら手放してしまうことになるため注意が必要です

若い世代の「投資慣れ」が生む新たなリスクと「毎月分配型」の誘惑

一方で、若い世代の投資に対する意識はどうでしょうか

図表5:NISA口座開設による投資イメージの変化

NISA口座を開設したことで、「投資が身近になりハードルが下がった」「ライフプランやマネープランを考えるようになった」という回答が若い人ほど多く見られます。これは資産形成の第一歩として非常に好ましい変化です

しかし同時に、「投資が怖いものではなくなった」と答える割合も若い世代ほど高くなっています。近年は世界的な株高傾向が続いたこともあり、「投資=お金が増える楽しいもの」とポジティブに捉えすぎている可能性があります。相場が暴落した際に「資産が大きく減る可能性」を本当に正しく理解できているかは、少し気がかりな点です。

さらに、NISA口座の活用方法においても、目先のお得感に惑わされた「もったいない選択」を望む姿が見えてきます。

NISA口座で「毎月分配型の投資信託」を購入したいと考えている人は、どの年代でも4割を超えており、なんと30代以下では64%に達しています

図表6:NISA口座での毎月分配型投資信託の購入

まず知っておきたい重要なポイントは、現在の新NISA制度では、長期の資産形成になじまない「毎月分配型」の投資信託は対象外となっており、購入できないということです。

「お小遣いのように毎月お金が入ってくるのが嬉しい」という気持ちは分かりますが、長期の資産形成という観点から見ると、これは非常に効率が悪い方法です。分配金としてお金を外に出してしまうよりも、分配せずにファンド内部で再投資(内部留保)した方が、複利効果と同等の効果が得られ、NISAの非課税枠を最大限に活かすことができます。

目先のお得感や楽しさに惑わされず、NISA制度の本来の強みを活かした使い方がまだ十分に浸透していない様子が伺えます

ネット証券時代の到来と「情報の選び方」

最後に、私たちが利用する金融機関や情報源の変化についても見てみましょう

図表7:有価証券の取引で主に利用されている金融機関

主に取り引きしている金融機関は、若い人ほど「ネット証券」、高齢層ほど「大手証券」や「銀行」の割合が高くなりますが、全年代を通じてトップは「ネット証券」となっています。スマホやPCでのネット取引に抵抗のない世代が年齢を重ねるにつれ、今後はシニア層も含めて「ネット証券主流」の時代が加速していくことは間違いありません

しかし、そこで重要になってくるのが「情報の集め方」です

図表8:証券投資に関する勉強や情報収集(学校や職場以外)

投資の情報収集源を見ると、若い世代はSNSやWebサイトが中心であるのに対し、高齢者ほど「金融機関の販売員」や「金融機関のセミナー講師」に依存する傾向があります

若い人は「SNSの極端な情報やバズ動画に惑わされないこと」、そしてシニア層は「金融機関にとって都合の良い(手数料が高い)商品を勧められるままに買わないこと」が求められます。どちらの世代であっても、他人の意見や勧めを鵜呑みにせず、最低限の知識を持って客観的に判断する姿勢が不可欠です

おわりに:自分の資産は「自分の知識」で守る

今回の調査からは、以下のような現代の投資家の姿が見えてきました

  1. シニア層:ネット取引を使いこなす一方で、投信や窓口取引ではコスト意識が薄れやすく、金融機関の提案やセールストークに流されてしまうリスクがある。
  2. 若い世代:投資へのハードルが下がった反面、リスクに対する過小評価や、NISAの非効率な使い方(毎月分配型の選択など)が見られる。

NISA制度の拡充により、誰もが気軽に投資を始められる素晴らしい環境が整いました。しかし、どんなに優秀な制度やツールがあっても、最終的に自分の資産を守り、増やしていくのは自分自身の「正解を選ぶ力(マネーリテラシー)」です

「周りが買っているから」「勧められたから」「なんとなく得そうだから」で選ぶのをやめ、手数料や分配金の仕組み、非課税制度の正しい受け取り方式などを一つひとつ確認する習慣をつけましょう。正しく学び、自ら判断できるようになることこそが、確実な資産形成への一番の近道なのです

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