【コラム】「アドバイザー」の皮をかぶった「セールスマン」に騙されないために ~無料相談と「中立」という言葉の裏側〜

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個人投資家として著名な水瀬ケンイチ氏が運営するブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」の2026年7月31日の記事を読んでいたところ、非常に興味深い記事が紹介されていました。Webメディア「Finasee」に掲載された、島田知保氏へのインタビュー記事『“切り抜き”が独り歩きした「老後2000万円問題」が本来、伝えたかったこと——報告書作成の現場からの真意』です。

この記事では、資産形成が身近になった一方で、個人のライフプランに本当に寄り添うアドバイザーの存在が不可欠であること、そして日本の金融業界において「金融商品の販売(セールス)」と「助言(アドバイス)」が曖昧に混ざり合ってしまっている現状が鋭く指摘されていました。

この記事に激しく同意すると同時に、日々のお金の相談現場に身を置く者として、私の中にずっと溜まっていた違和感と強い危機感について、言葉にしてみたいと思います。

「無料のマネー相談」に潜む構造的なカラクリ

お金の悩みができたとき、まず思い浮かぶのは銀行や証券会社の窓口に行くことかもしれません。身近で安心感もありますし、「相談料は無料」と聞けば、気軽に行ってみようと思うのも自然なことです。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。企業がボランティアで相談に乗ることはありませんから、「無料」の裏には必ずカラクリが存在します。その相談費用は、あなたが購入する金融商品の「高い販売手数料」や「毎月差し引かれる管理費用(信託報酬)」の中に、目に見えない形でしっかり組み込まれているのです。結果として、相談料はタダに見えても、巡り巡って高いコストを後から負担させられているケースが後を絶ちません。

最近では「営業ノルマを廃止した」と謳う金融機関も出てきましたが、どれだけノルマを無くそうと、商品を売って得られる手数料収入が収益の柱である構造自体は変わりません。金融機関の窓口にいる担当者は、あなたの人生に伴走する相談員である前に、自社の金融商品を販売する「営業担当者」なのです。

知識がないまま無防備に窓口へ行き、提案された商品を言われるがままに購入してしまうこと。つまり、「セールスマン」の立場にある人に無防備なまま全幅の信頼を寄せてしまうことこそが、資産形成において最初に注意すべきリスクです。

海外のように「助言そのものに対して直接対価を支払い、商品はコストの低いものを自分で選ぶ」というスタイルの方が、長期的にははるかに合理的で安く済むケースが多いのです。

「中立」という言葉への大きな違和感

「では、金融機関に属していない独立系や、中立の相談窓口なら安心なのか?」というと、実はここにも見落としがちな盲点があります。

近年の構造的課題を受けて、2024年には国主導で「J-FLEC(金融経済教育推進機構)」が設立されるなど、金融機関から独立した立場での相談体制を整えようとする公的な動きも始まっています。こうした試み自体は前進であり、今後どのような実効性を持って広がっていくかは注視したいところです。

一方で、私は「中立なアドバイザー」という言葉に対して、違和感を抱いています。私自身、かつてはこの言葉を使っていましたが、最近は使うのをやめました。

「中立」という言葉の辞書的な定義を調べてみると、「対立するどちらの側にも味方しないこと」「どちらの意見も支持しないこと」とあります。さらに踏み込むと、「理念がない状態」や「自分の軸がない」という意味合いまで含まれているようです。

お金の相談における「対立する両者」とは、「商品を売る側の金融機関」と「商品を買う側の顧客」です。

そう考えると、「どちらの味方もしないアドバイザー」とは一体何なのでしょうか。顧客と金融機関の利害が対立したとき、どちらの味方もしない人に何を期待すればいいのでしょう。それは実質的に「あなたの味方にはなりません」と言っているのと同じではないでしょうか。そんな「自分の理念や軸がないアドバイザー」に、一生懸命働いて築いた大切なお金の相談をしたいと思う人などいるはずがありません。

お金の悩みを打ち明けてくださった相談者と向き合う以上、アドバイザーは「金融機関と顧客の中間に立つ存在」であってはなりません。100% 顧客の立場に立ち、顧客の利益だけを考えて伴走するのが本来あるべき姿です。

また、最近増えている「独立系資産運用アドバイザー(IFA)」であっても、実態は金融機関から商品仲介の手数料(マージン)を得て成り立っているケースが少なくありません。「独立」や「中立」という耳あたりの良い言葉が、必ずしも「顧客だけの利益を追求している」ことを保証するわけではないのです。

「アドバイザー」の皮をかぶった「セールスマン」たち

今の日本には、真の意味で「顧客の立場に立つアドバイザー」が圧倒的に不足しています。

「あなたのためにアドバイスします」と笑顔で寄り添いながら、その実、「あなたに商品を売って自分が儲ける」というビジネスモデルが横行しています。まさに「アドバイザー」の皮をかぶった「セールスマン」です。

その結果、どうなっているでしょうか。 今や世間では、

  • 「FP(ファイナンシャルプランナー)」= 保険商品を売りに来る怪しい人
  • 「資産運用アドバイザー」= 高コストな投信や金融商品を売りつけてくる人

というネガティブなイメージすら定着しつつあります。

私は、金融商品の販売や仲介を一切行わず、純粋に相談料のみをいただいてアドバイスを行う立場をとっています。しかし、一般的な肩書で言えば私も「FP」であり「資産運用アドバイザー」です。商品販売で利益を得ている人たちとはまったく違うスタイルで向き合っているのに、同じ肩書である以上、世間の目から見れば同じように映ってしまうという現実に、時折愕然とすることがあります。正直、悔しい気持ちもありますが、だからこそ「本物のアドバイスとは何か」を自分自身の言葉で伝え、実践し続けなければいけないと思うのです。

真の「顧客第一」を求めて

一般の方々が、毎日一生懸命に働いて築き上げた大切なお金。それが、「アドバイザー」を名乗る「セールスマン」たちの都合によって吸い取られてしまうようなことは、絶対にあってはなりません。

この記事を読んでくださった皆様には、ぜひ「無料」という言葉や、「中立」「独立」というフレーズの裏側にある仕組みに目を向けていただきたいのです。

  • そのアドバイザーは、商品が売れたときに手数料が入る仕組みになっていないか?
  • アドバイスの対価ではなく、商品の販売で利益を得ていないか?

この点を見極めることが、自分自身と家族の資産を守る第一歩になります。

セールスとアドバイスが完全に分離され、正当な助言に対価を払い、アドバイザーが100%顧客の味方として伴走できる社会——日本の金融環境は、まだその途上にあります。

今の状況を変えていくのは容易ではありません。しかし、一人でも多くの方が正しい知識を持ち、怪しい罠に惑わされないよう、私も微力ながら真の「顧客第一」を貫く活動を地道に続けていきたいと思っています。

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