本日、資産のミライ研究所から「令和の“住まい”と住宅ローン事情(2026年)」が公表されました。 先日のコラム(5月1日公開)では「頭金ゼロ」や「変動金利」の危険性について触れましたが、今回の最新レポートには、「今のスタンダード」と思わせるようなデータが並んでいます。
レポートからは「若くても、手元にお金がなくても、工夫次第で理想の家が持てますよ」という、とても心強いメッセージが伝わってきます。ただ、こうした前向きなデータこそ、少しだけ落ち着いて「自分にとっての正解」を考える材料にしていただきたいのです。
「みんながそうしている」なら安心?
レポートの序盤には、「年齢と共に持ち家率が上がる」「家を買う人の8割はローンを使う」といった当たり前の事実が並びます。ここでの隠れたメッセージは「いずれみんな家を持つし、自分でローンを組むのが当然ですよ」という心理的な土台作りです。
そして、その後に「世間のみなさんは、このようなローンを組んでいますよ」というデータが並びます。「みんながそうしているなら、自分も同じにすれば大丈夫かな」と思ってしまいそうです。
しかし、本来大切なのは「みんながどうしているか」ではなく「自分が返済できるのか」という個別の物差しです。
ペアローンの「人気」の正体
ペアローンなら理想の家を建てられる?
「単独ローンよりもペアローンの方が借入額を大きくできる」というデータが並びます。このデータを見ると、「ペアローンにすれば理想の家を建てられる」と感じる人も多いかもしれません。

ペアローン利用率を強調
そして、「若い世代は積極的にペアローンを活用している」と説明しています。
しかし、データの中身を冷静に見てみましょう。
- レポートの強調点:若年層でペアローンの利用が進んでいる
- 実際のデータ:どの年代で見ても「単独ローン」が6割以上で圧倒的

約2割の少数派の動きを強調することで、借入額の限界を押し上げるペアローンへ誘導する雰囲気づくりがされているように思えます。
35年超えローンの「増加」をどう見るか
返済期間36年以上の利用者が増えている点もクローズアップされています。「みんな長期ローンにして、月々の支払いを楽にしていますよ」といくメッセージを伝えたいのかもしれませんが、実態は異なります。
長期ローンが選ばれていることを強調
- レポートの強調点:20~30代で返済期間36年以上が1割程度存在すること
- 実際のデータ:全年代では35年未満が多数、30年未満でも半数以上を占める

銀行側には「期間を延ばして、より多額のお金を貸したい(利息収入を増やしたい)」というインセンティブがあります。仕方がないことです。一方で、超長期ローンを組む借り手は「定年後も続く借金」を背負うことになります。
いつまでに返済し終えるか、教育資金や老後生活の準備も含めて考えて判断していきたいですね。
変動金利に潜む「利益相反」の罠
最も注意すべきは金利選択に関するデータです。「高額な借入れほど、変動金利が選ばれている」という事実が示されています。

超低金利時代の契約者のデータ混入
レポートのアンケート結果には、超低金利時代にローンを組んだ人の回答が多く含まれている可能性があります。当時は変動金利が正解だったのかもしれません。しかし、金利上昇局面の今から借りる人にとって、そのデータはそのまま当てはまりません。この点は、本レポートを読み解く上での大事な注意点です。
「高額借入×変動金利」の矛盾
高額な借入れほど変動金利が選ばれているのは、「毎月の返済額を抑えたい」という動機の表れでしょう。
しかし、借入額が大きいほど金利上昇時のダメージは加速度的に増します。「高額だから金利の支払いを安く抑えたい」という動機で変動金利を選ぶのは、金利上昇時のダメージを最大化する危険なギャンブルと言えなくもありません。
銀行にとって変動金利は「将来の金利上昇リスクを借り手に背負わせる商品」であることを強く認識しておくことが大切です。
完済まで、家は「あなたのものではない」
このレポートを銀行が使うとしたら、次のような「理想(?)のマイホーム」の提案になるのではないでしょうか。
- 若くても、
- 頭金がなくても、
- ペアローンにすれば、
- 多額に借りることができて、
- 変動金利にすれば、
- 毎月の返済額を安く抑えられて、
- あなたが希望するマイホームを建てられます
しかし、
『住宅ローンを完済するまで、その家の実質的なオーナーは「銀行」です』
住宅ローンを組む際、銀行はあなたの家に「抵当権」を設定します。これは「返せなくなったら、家を強制的に売って回収する権利」です。35年ローンを組むということは、35年間、銀行の権利の上で生活するということです。
さらに、変動金利特有の「5年ルール」「125%ルール」は、借り手を守るためのものではなく、単なる支払いの先送りに過ぎません。上昇した利息が返済額を超えれば「未払利息」として積み上がり、最後には一括であなたの家計を襲います。
まとめ:責任を負うのは、あなた自身です
私は、「頭金ゼロは絶対にNG」とか「変動金利は選択してはダメ」と言いたいわけではありません。仕組みを理解した上で敢えて選択することも考えられます。大切なことは、「周りに流されて決めるのではなく、最低限の理解をした上で自ら決める」ことです。
先日のコラムでもお伝えしましたが、銀行は営利企業です。利益を上げる努力をするのは当然です。そして、彼らの提案が必ずしも「あなたの人生の安全を保証するものではない」ということを忘れないでください。
客観的なデータから生まれる「恣意的な強調」に惑わされないでください。「周りのみんな」や「過去のみんな」がどうあれ、家族の生活を維持し、責任を負うのはあなた自身なのですから。


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