「安心安全に資産を増やしたい」「増やすのはいいけれどリスクの取り方がわからない」——資産形成をするとき、最近よく耳にするのが「個人向け国債」です。
元本保証で国が発行している安心感があり、昨今の金利上昇局面においては利回りの魅力も高まっています。しかし、銀行や証券会社の窓口で「個人向け国債を買いたい」と相談したのに、なぜか他の金融商品を熱心に勧められた経験はないでしょうか?
その疑問を解き明かす鍵は、財務省が公表している最新資料『債務管理リポート2026』の中にあります。今回は、金融機関が得ている「手数料収入」から、金融機関が商品を勧める本当の理由を考えていきましょう。
財務省のレポートが明かす「個人向け国債」の手数料
財務省の『債務管理リポート2026』には、個人向け国債の販売を委託されている約880の金融機関(銀行、証券会社、郵便局など)に対し、国がどれくらいの手数料を支払っているかが明記されています。
そこには、以下のような記載があります。
「令和2年10月発行(9月募集)以降、募集発行事務取扱手数料を引下げる(固定3年:額面100円あたり8銭、固定5年:額面100円あたり11銭、変動10年:額面100円あたり14銭)とともに、同年同月発行以降の個人向け国債の利払時における参加者口座の残高の2/10,000を管理手数料として支払います。」
これをわかりやすく「%(パーセント)」に直して整理してみましょう。金融機関(販売会社)が得られる手数料収入は以下のようになっています。
- 販売時の手数料(1回のみ)
- 固定3年:0.08%
- 固定5年:0.11%
- 変動10年:0.14%
- 保有中の管理手数料(毎年)
- 全タイプ共通:年0.04%(年2回の利息支払時にそれぞれ0.02%ずつ)
たとえば、私たちが窓口で100万円分の「変動10年」を購入したとします。このとき銀行が得られる手数料収入は、販売時にたったの1,400円です。さらに、そのあと毎年もらえる管理手数料は、年間でわずか400円にしかなりません。
金融機関が扱う他の金融商品の手数料収入は?
では、金融機関が普段の営業で積極的に勧めてくる他の金融商品はどうでしょうか?
代表的な商品について、金融機関(販売会社)が得ている手数料収入を見てみます。
- アクティブ型投資信託
販売時に1.0%〜3.0%程度(100万円で1万〜3万円)、さらに保有中も毎年0.5%〜1.0%程度(100万円で年5,000〜1万円)の代行手数料(信託報酬の販売会社分)が金融機関に入り続けます。 - ファンドラップ
販売時の手数料は0%ですが、保有している間、金融機関の取り分(投資一任・管理報酬など)として毎年1.0%〜1.5%程度(100万円で年1万〜1.5万円)という高い手数料収入が入り続ける仕組みになっています(※別途、組入ファンドの信託報酬がかかります)。 - 外貨建て保険(一時払いなど)
契約(販売)した瞬間に、保険会社から金融機関へ3.0%〜7.0%程度(100万円で3万〜7万円)という非常に大きな初回手数料が支払われます。
これらと比べると、販売時に1,400円、毎年400円しか入らない個人向け国債は、店舗運営費や人件費を抱える金融機関にとってまさに「超・薄利商品」です。わざわざ自分から積極的に勧めたがらない舞台裏の事情がよくわかります。
超低コストな「オルカン」も考えてみよう
ここで少し視点を変えて、現在非常に売れている超低コストなインデックスファンドの代表格「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)についても考えてみましょう。
個人向け国債と株式インデックスファンドは商品性が全く異なるため「比べるべきか?」という問題はありますが、あえて「金融機関の儲け」という観点から比較してみたいと思います。
オルカンの信託報酬(年約0.05775%)のうち、販売会社(金融機関)が得られる代行手数料は年0.0175%です。
つまり、100万円分購入されても、金融機関に入るのは年間わずか175円。なんと、薄利な個人向け国債(年400円)よりも、さらに大幅に薄利なのです。
数字で見る! 金融機関が得られる手数料の一覧表
ここで、ここまでに登場した金融商品を「金融機関(販売会社)が得られる手数料収入」で横並びに比較してみましょう。
仮に「100万円で一括購入し、10年間保有し続けた場合」に、金融機関が手にできる手数料収入の累計額の概算額を算出して並べてみました(※価格変動や解約等は考慮しない簡易的な計算です)。
| 金融商品 | 販売時の獲得手数料(100万円の場合) | 保有中の獲得手数料(100万円の場合) | 10年保有した際の手数料総額(100万円の場合) | 金融機関のビジネス上の位置づけ |
| 一時払い外貨建て保険 | 3~7%程度 (3~7万円) | 0.1~0.5%程度 (年1,000~5,000円) | 4~12万円程度 | 最優先で売りたい「超・高収益」商品 |
| アクティブ型投資信託 | 1~3%程度 (1~3万円) | 年1~3%程度 (年5,000円~1万円) | 6~13万円程度 | 販売時も保有時も美味しい定番収益商品 |
| ファンドラップ | 0% (0円) | 年1~1.5%程度 (年1~1.5万円) | 10~15万円程度 | 長期で囲い込みたい継続型ストック商品 |
| 個人向け国債(変動10年) | 0.14% (1,400円) | 年0.04% (年400円) | 5,400円 | 単体では厳しい「超・薄利」商品 |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | 0% (0円) | 年0.0175% (年175円) | 1,750円 | 個人向け国債すら凌ぐ「超絶・薄利」商品 |
こうして10年間の累計で比較すると、一目瞭然です。
外貨建て保険やアクティブ投信、ファンドラップであれば、10年間のうちに金融機関へ4〜15万円程度の手数料が入ってきます。
一方で、個人向け国債は10年預かってもたったの5,400円、オルカンに至っては1,750円にしかなりません。
実店舗を持つ従来の金融機関では、個人向け国債ですら薄利で積極的に販売できないのですから、オルカンのような超低コスト商品を商品ラインナップに入れられないのも当然と言えます。
まとめ:コストを抑えて賢く資産形成を
みなさんが資産形成に取り組む際、コストを気にすることは非常に大切です。「利益は不確実だが、コストは確実に利益を蝕む」からです。
そう考えたとき、個人向け国債や超低コストなインデックスファンドの魅力をあらためて再認識させられます。
金融機関が得る手数料がこれほどまでに低いということは、逆に言えばみなさんにとってそれだけ余計なコストを取られない(メリットがある)と考えてよいでしょう。
- 無リスクで安全に守りながら増やしたい資金 ➔ 個人向け国債
- 長期でリスクをとって増やしたい資金 ➔ 超低コストなインデックスファンド(オルカンなど)
どちらも金融機関にとっては「美味しくない(儲からない)商品」ですが、みなさんにとってはコストが抑えられた素晴らしい商品です。目的に合わせて、この2つをうまく資産形成に組み込んでみてはいかがでしょうか。
個人向け国債とインデックスファンドについての詳細については、著書「父が溶かした退職金(上)」に記載しています。これらの商品の組み合せ方についても記載しています。ぜひご参照ください。


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