【コラム】「親の資産を知りたい」と思うのは、本当に親のため? 隠れた“下心”に親は気づいている

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親の資産を把握したい子どもたち

「そろそろ親も高齢だし、万が一のときのために相続の準備をしておきたいな……」

そんな風に考える方が増えています。実際、PR media株式会社が実施した「相続準備に関する実態調査」によると、相続準備として「親の資産を把握しておきたい」と考える人は67.0%に上り、高い関心を集めていることが分かります。一方で、実際に把握できている人は35.4%です。

さらに、相続対策として最も関心が高いのは「親の資産を見える化する方法」であり、最も見えていない資産の筆頭には「預貯金」が挙げられていました。

このデータを見て、あなたはどう感じるでしょうか。 「やっぱりみんな困っているんだな」「うちも早く親の通帳のありかや残高を確認しなきゃ」と思った方も多いかもしれません。

しかし、この結果を少し引いた目で見つめ直してみると、ある「違和感」が浮かび上がってこないでしょうか。それは、「親の資産を知りたい、特に預貯金がいくらあるのか把握しておきたい」という、子ども側の心理に対する違和感です。

忘れてはならない大前提「それは、あなたの財産じゃない」

最初に、少し厳しいかもしれない事実をあえて言葉にさせてください。 「それは、あなたの財産ではありません。親の財産です」

「親の資産を把握しておきたい」という理由の多くは、表向きには「いざという時のため」「手続きで困らないため」とされます。しかし、その根底には「自分は将来、いくらもらえるのだろうか?」という、子ども自身の都合や期待が透けて見えないでしょうか。

特に「預貯金」への関心が高いという結果は、それを物語っているようにも思えます。なぜなら、不動産や株式などと違って、預貯金は最も「分けやすい」財産であり、金額を最も想像しやすいからです。

しかし、相続を単なる事務手続きや、お金のやりとり、財産のパズルのように捉えてしまうのは、非常に寂しいことです。

親が長い人生の中で、家族を支え、生活を営みながら築いてきたいくつもの資産。そこには、ただの数字以上の意味があるはずです。

「どんな想いを持って、この資産を築いてきたのか」
「これから託すものを、次の世代にどう活用してほしいのか、どう守ってほしいのか」

親から子へと資産を渡していくことは、本来、その裏側にある「想い」を託すことであるはずです。そう考えると、「いくらあるのか」という金額の把握ばかりを急ぎ、親の人生や想いに関心を向けない人は、もしかするとその大切なバトンを受け取る「適任者」とは言えないのかもしれません。

相続が「争族」になるのを防ぐのは、子どもではなく「親の意志」

もちろん、相続が原因で家族が揉める「争族」を避けたい、そのために事前の準備が大切である、というのは紛れもない事実です。

認知症などを発症してしまえば、資産の凍結や法律的な手続きの制限がかかり、元気なうちでなければ何の対策もできなくなってしまうという現実もあります。

ですが、ここで最も重要なポイントがあります。 「準備し決断するのは、あくまでも子どもではなく親自身である」ということです。

  • 自分の保有資産をリストアップする
  • どの資産を、誰に、どのようなバランスで渡すかを決める
  • それを確実に実行するために「遺言書」を書く

これらすべての行動は、親自身が本気で考え、主導しなければならない領域です。子どもが先回りして「遺言書を書いてよ」「資産をリスト化してよ」と主導しようとすると、往々にして失敗します。

なぜなら親の立場からすれば、子どもが主導して財産情報を集めようとする姿は、まるで「財産目当てで動いている」かのように感じられるからです。

そうなれば、親は不信感を抱き、心を閉ざしてしまいます。一度閉ざされた心を開くのは、容易なことではありません。子どもにできることは、「主導すること」ではなく、親が自発的に準備を始められるように「環境を整え、必要に応じてサポートすること」に徹するべきなのです。

親に「家族を困らせたくない」と思ってもらうために

では、子どもがでしゃばらず、親自身に「本気で考えてもらう」ためにはどうすればいいのでしょうか。親に「自分が元気なうちに、後に残る家族が困らないように準備をしておこう」と思ってもらうことがスタートラインです。

ここが一番難しく、単純なノウハウだけでは解決できない部分です。なぜなら、これはテクニックの話ではなく、「気持ちの問題」であり、それまでの家族関係が大きく影響するからです。

普段からコミュニケーションが希薄なのに、ある日突然「お父さん、財産の話だけど…」と切り出せば、警戒されるのは当然です。親が安心して「万が一のあとの財産のゆくえ」について話せるようになるには、子ども自身の日頃の関わり方や、敬意を持った言葉選びがすべてを握っています。

まずは、お金の話を完全に脇に置いて、親の「これまで」と「これから」に興味を持つことから始めてみましょう。

「お父さんが若い頃、どういう想いでこの家を建てたの?」
「これから、どんなふうに過ごしていきたい?」

そうやって親の人生へのリスペクトを示し、傾聴する姿勢があって初めて、親の側に「この子たちなら、自分の想いもしっかり受け止めてくれるだろう」という信頼感が生まれます。

もし、具体的な話を切り出すなら、「財産が知りたい」ではなく「親の財産を守りたい」というスタンスを言葉で伝えるのが大切です。例えば、以下のような話から切り出してみてはどうでしょうか。

「最近、高齢者を狙った詐欺のニュースが多くて心配なんだ。普段、お金の管理ってどうしてる?」

これなら、子ども側の都合ではなく、「親への思いやり」として言葉が届くはずです。

焦らず、対話を重ねる。家族が顔を合わせる時間を大切に

親のこれからの人生や、大切な資産について考えることは、一朝一夕には進みません。一度の帰省ですべてを解決しようと焦ると、関係がこじれてしまう原因になります。

だからこそ、お盆休みや正月休みなど、家族が顔を合わせるタイミングを捉えて、少しずつ、丁寧に会話の機会を作っていくことをお勧めします。

大切なのは、テクニックとして親を誘導することではありません。お互いの近況を報告し合う延長線上で、親の心に寄り添いながら、対話を重ねていくことです。

  • 最初のステップ: 現状の健康状態や、これからの暮らしの希望を優しく聴く
  • 次のステップ: もしもの時の連絡先や、希望する医療・介護について確認する
  • その先のステップ: 信頼関係を深めた上で、具体的な資産の種類や保管場所に触れる

世間話や他人の事例を借りて、「友達の家で相続の手続きがすごく大変だったらしくて、我が家も少しずつお互いの状況を共有しておけたら安心だね」と、お互いのための安心材料として、やんわりと意識を合わせていくのが自然です。

どうしても親子で話せないときの「第三者」という選択肢

そうは言っても、「理屈は分かっても、親子だからこそ照れくささや意地があって、どうしても感情的になってしまう」というケースも少なくありません。特に、これまでの家族関係によっては、どれだけ言葉を選んでも身構えられてしまうこともあるでしょう。

そんなときは、無理に身内だけで解決しようとせず、中立的な専門家という「第三者」を間に挟むことを検討してみてください。

身内から言われると勘繰ってしまう親でも、プロの専門家から「一般的な手続きの解説」や「これからの生活設計(ライフプラン)の確認」として客観的にアプローチされると、すんなり耳を傾けられるケースが多々あります。

専門家を交えることで、資産の数字だけでなく、親が本当に望んでいる老後の過ごし方や、子どもたちに遺したい「本音」を引き出すきっかけにもなります。「親子だけで抱え込まない」というのも、立派な相続準備の一つです。

まとめ:後回しにせず、今できる対話から始めよう

「親の資産を知りたい」という願い自体は、決して悪いことではありません。しかし、その目的が「将来自分が引き継ぐ分を知るため」や「手続きを楽にするため」という利己的なものになっていないか、私たちは常に自戒する必要があります。

そして何より、この準備には「時間」が必要です。

認知症を発症してしまってからでは手遅れであり、親が自分の意志をはっきりと示せる「元気なうち」でなければ、相続の準備は進められません。

ここで、ぜひ一度、電卓をたたいて想像してみてほしいのです。

「この先、家族みんなでそろって親と過ごせる時間は、残り何時間あるでしょうか?」

お盆や正月など、家族全員が顔を合わせる機会は、年間で数えるほどしかありません。親に本気で考えてもらうためには、何度も対話を重ねていく時間が必要です。しかし現実には、私たちが想像している以上に、残された時間は驚くほど少ないのではないでしょうか。

相続準備の主役は、どこまでいっても親自身です。子どもにできる最善のサポートは、資産を無理に聞き出そうとすることではなく、その限られた時間の中で、親が安心して本音を話せる関係性を築いておくことです。

資産の「見える化」を急ぐ前に、まずは親の「想い」に耳を傾け、家族の心の「見える化」をすること。

「いつかそのうちに」と後回しにせず、次の帰省で顔を合わせたとき、まずは「普段のお金の管理」という、小さな会話から始めてみませんか。それこそが、親にとっても子にとっても幸せな「想いの承継」を叶える、確かな一歩になるはずです。

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