【コラム】アクティブファンドの厳しい現実:低コストインデックスファンドへの道

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投資信託を選ぶとき、「プロが運用するから安心」という言葉に惹かれたことはありませんか。しかし、世界的な調査機関であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が発表したデータ(SPIVA: S&P Indices Versus Active、2025年6月30日時点)を見ると、驚くべき事実が明らかになります。実は、プロが運用する投資信託の大半が、市場平均に負けているのです。

「アクティブファンド」「インデックスファンド」「ベンチマーク」とは

まず、投資信託の基本を整理しましょう。

ベンチマークとは、投資の成績を測る「ものさし」のことです。例えば、日本株に投資するなら日経平均株価やTOPIX、アメリカ株ならS&P500といった株価指数がベンチマークになります。これは「市場全体の平均的な成績」を表しています。

アクティブファンドとは、プロのファンドマネージャーが銘柄を選んで運用する投資信託のことです。「この会社は成長しそうだ」「あの株は割安だ」といった判断をして、ベンチマーク(市場平均)を上回るリターンを目指します。その分、運用コストは高めです。

一方、インデックスファンドとは、ベンチマーク(市場平均)に連動することを目指す投資信託のことです。プロが銘柄を選ぶのではなく、機械的にベンチマークと同じ銘柄を同じ割合で買います。そのため、運用コストを大幅に抑えることができます。

つまり、アクティブファンドは「市場平均を超えること」を目指し、インデックスファンドは「市場平均と同じ成績」を目指すという違いがあります。

世界で広がるアクティブファンドの敗北

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が世界中のアクティブファンドを調査したところ、衝撃的な結果が出ました。多くの国で、アクティブファンドの大半がベンチマークに負けていたのです。

以下の表は、主要な市場でアクティブファンドがベンチマークに負けた割合を示しています。

市場ベンチマーク1年3年5年
日本S&P/TOPIX 15030%71%79%
アメリカS&P 50073%65%87%
ヨーロッパS&P Europe 35072%90%92%
インドS&P India LargeMidCap42%67%90%
中国S&P China A 30061%70%51%
全世界S&P World82%90%94%

例えば、日本市場では5年間で79%のアクティブファンドがベンチマークに勝てませんでした。アメリカでは87%、ヨーロッパでは92%ものファンドが市場平均を下回りました。新興国のインドでは90%、全世界のファンドを見ても94%が負けています。

つまり、プロが一生懸命に銘柄を選んで運用しても、そのほとんどが市場平均に負けてしまうという現実があるのです。

日本市場の特徴:短期では健闘するが長期では…

表を見ると、日本市場には興味深い特徴があることに気づきます。1年間では、アクティブファンドの70%(100%-30%)がベンチマークに勝っています。これはアメリカの27%(100%-73%)や全世界の18%(100%-82%)と比べて、かなり優秀な成績です。

なぜ日本では短期的にアクティブファンドが健闘するのでしょうか。いくつかの理由が考えられます。日本市場には、情報が十分に織り込まれていない中小型株が比較的多く存在すること、アメリカなどと比べて市場の効率性がやや低いこと、そして短期的な市場の変動が大きいため、プロの目利きが活きやすいことなどです。

しかし、注目すべきは長期の結果です。3年になると71%のファンドが負け、5年になると79%のファンドがベンチマークを下回ります。日本市場は他の市場に比べると5年でも勝率がやや高めですが、それでも約8割のファンドが負けているという事実に変わりはありません。

これは何を意味するのでしょうか。日本市場では、短期的には銘柄選択の効果が出やすいものの、長期になるとコストの重さや運用判断のミスが累積し、結局は多くのファンドがベンチマークに勝てなくなるということです。興味深いのは、中国市場でも5年間で51%と比較的勝率が高いことです。これらの市場では短中期的にアクティブ運用の余地があるように見えますが、それでも半数以上のファンドは負けています。

時間が示す残酷な真実

ほとんどの市場で、投資期間が長くなるほど、アクティブファンドの勝率が下がる傾向があります。

アメリカ市場では、1年間で負けたファンドは73%でしたが、3年間では65%、5年間では87%となっています。ヨーロッパでは1年72%、3年90%、5年92%と上昇しています。インドでは1年42%、3年67%、5年90%と、期間が長くなるほど勝率が大きく下がっています。

全世界のデータも顕著です。1年では82%のファンドが負け、3年では90%、5年では94%まで上昇します。つまり、5年間でベンチマークに勝てるアクティブファンドはわずか6%しかないのです。

短期的には運やタイミングで市場を上回ることがあっても、長期になればなるほど、アクティブファンドが勝ち続けることが難しくなるのです。

なぜアクティブファンドは長期で勝てないのか

では、なぜプロが運用するアクティブファンドは長期で勝てないのでしょうか。主な理由は3つあります。

第一に、コストが高いことです。アクティブファンドは、ファンドマネージャーの給料、調査チームの人件費、銘柄の売買にかかる手数料など、多くのコストがかかります。日本のアクティブファンドでは、年間1〜2%程度の手数料(信託報酬)を支払うのが一般的です。

一見、1.5%という数字は小さく見えるかもしれません。しかし、10年間で約14%、20年間で約26%ものリターンが手数料として消えていきます。ベンチマークに勝つには、まずこの高いコストを上回る成績を出さなければならないのです。これは非常に高いハードルです。

第二に、市場が効率的になっていることです。昔は一部の専門家だけが企業の情報を持っていましたが、今ではインターネットの発達により、誰でも企業情報にアクセスできるようになりました。AIやコンピューターによる自動取引も普及し、株価には利用可能な情報がすぐに反映されるようになっています。このような効率的な市場では、プロでも継続的に市場を出し抜くことが難しくなっています。

第三に、成績の悪いファンドが見えなくなることです。運用成績が悪化したファンドは、他のファンドと統合されたり、運用を停止したりして消えていきます。すると、残っているファンドだけを見れば成績が良く見えてしまいます。これを「サバイバーシップバイアス(生存者バイアス)」と言います。勝てない理由とは少し観点が異なりますが、非常に重要なポイントです。

今回のS&Pの調査では、消えてしまったファンドも含めて評価しているため、より正確な実態が分かります。そして、その結果は「アクティブファンド全体としては、一般的に思われているよりもさらに成績が悪い」というものでした。

投資期間が長いほど差が拡大する理由

では、なぜ時間が経つほどアクティブファンドの勝率が下がるのでしょうか。

最大の理由は「複利の効果」です。複利とは、利益が利益を生む仕組みのことです。例えば、市場全体の成長率が年7%だとしましょう。手数料が年0.1%のインデックスファンドなら、実質的に年6.9%で増えていきます。しかし、手数料が年1.5%のアクティブファンドなら、実質的には年5.5%でしか増えません。

この差は、1年だけ見れば小さいかもしれません。しかし、30年間では大きな違いになります。100万円が約740万円になるか、約500万円にしかならないかという違いが生まれるのです。

さらに、プロのファンドマネージャーでも、10年、20年という長期にわたって常に正しい判断を下し続けることは極めて難しいのです。市場の環境は変化し、かつて成功した投資戦略も通用しなくなります。結果として、長期になればなるほど、シンプルに市場全体に投資するインデックスファンドの方が有利になるのです。

低コストインデックスファンドという賢明な選択

ここまでの話から導かれる結論は何でしょうか。それは、多くの人にとって「低コストのインデックスファンド」が最も賢い選択だということです。

日本でも最近、年間の手数料が0.1%程度という超低コストのインデックスファンドが登場しています。アクティブファンドの手数料が1〜2%であることを考えると、この差は非常に大きいのです。

「市場平均で満足するなんて、つまらないのでは?」と思うかもしれません。しかし、データが示すように、プロが運用するアクティブファンドの大半は市場平均に勝てないのです。日本市場でさえ、5年間で79%のアクティブファンドがベンチマークを下回っています。全世界では94%が負けています。

それならば、最初から低コストで市場平均(ベンチマーク)と同じ成績を目指すインデックスファンドを選んだ方が、結果的に多くのアクティブファンドよりも良い成績になる可能性が高いのです。

「勝てるアクティブファンドを選べばいい」は本当か?

ここまで読んで、「それなら、勝てるアクティブファンドを選べばいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、これは想像以上に難しいのです。

第一に、過去の成績は将来の成績を保証しません。今年良い成績を出したファンドが、来年も良い成績を出すとは限りません。市場環境が変われば、かつて成功した投資戦略が通用しなくなることは珍しくありません。

第二に、優秀なファンドマネージャーは移動します。良い成績を出したファンドマネージャーは、より高い報酬を求めて別のファンドに移ったり、独立したりします。あなたが「このファンドマネージャーなら信頼できる」と思って投資しても、数年後にはその人がいなくなっている可能性があります。

第三に、運の要素を見分けることができません。5年間で6%のファンドが勝っているとしても、それが実力によるものか、単なる運によるものかを事前に判断することは不可能です。統計的に考えれば、多数のファンドが存在する中で、一定数のファンドが偶然良い成績を出すのは当然のことです。

第四に、人気が出ると運用が難しくなります。優秀な成績を出したファンドには資金が殺到します。すると、ファンドの規模が大きくなりすぎて、機動的な運用ができなくなります。小回りが利いたからこそ良い成績を出せていたファンドが、資金が増えたことで平凡な成績に落ち着くケースは少なくありません。

第五に、選択にかかる時間とコストも無視できません。数千本あるアクティブファンドの中から、将来勝てるファンドを見極めるには、膨大な時間と労力が必要です。そして、その努力をしても、結果的に勝てる保証はないのです。

このような理由から、「勝てるアクティブファンドを選ぶ」という戦略は、一般の投資家にとって現実的ではありません。それよりも、最初から低コストのインデックスファンドを選び、長期で保有する方が、はるかに確実性の高い戦略なのです。

まとめ

世界中のデータが同じことを示しています。アクティブファンドの大多数はベンチマークに勝てず、その傾向は投資期間が長くなるほど顕著になります。日本市場も例外ではなく、短期では健闘しても、5年では79%のファンドが負けています。全世界では5年間で94%という圧倒的な割合のファンドが市場平均を下回っています。

高いコスト、効率的な市場、そして人間の判断ミスの累積が、長期的な成績不振の主な原因です。そして、将来勝てるアクティブファンドを事前に選ぶことは、ほぼ不可能です。

投資の世界で「確実」なことは少ないですが、「コストを抑えることが重要」ということは、ほぼ確実に言えることの一つです。低コストのインデックスファンドで市場全体に幅広く投資し、長期で持ち続ける。このシンプルな戦略こそが、多くの投資家にとって最も賢明な選択なのです。


データ出所: S&P Dow Jones Indices LLC「SPIVA: S&P Indices Versus Active」(2025年6月30日時点)
詳細は以下のURLをご参照ください:
https://www.spglobal.com/spdji/en/documents/spiva/spiva-infographic.pdf

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