【コラム】新NISA活用状況の定点観測から見える利用者の姿

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はじめに

2024年1月からスタートした新NISA制度は、日本の個人投資家の行動を大きく変えつつあります。日本証券業協会が2025年11月に公表した「NISA口座の開設・利用状況(2025年6月末時点)」から、新NISA制度開始後1年半の実態を読み解いてみましょう。

年初一括投資と積立投資、二つの投資スタイル

新NISA制度では、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの投資枠が用意されています。2025年の買付動向を見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。

図表1.NISA口座の買付額

成長投資枠での買付額は、1-3月期に比べて4-6月期が約半分に減少しています。これは、年初に一括投資を行っている利用者がかなりの割合で存在することを示唆しています。年間投資枠240万円を最大限活用しようと、年初にまとまった資金を投入する戦略を取る人が多いのでしょう。

一方、つみたて投資枠での買付額は、1-3月期と4-6月期でほぼ同等の規模を維持しています。毎月コツコツと積立を継続している利用者の姿が見て取れます。この対照的な動きは、利用者が2つの枠を明確に使い分けているものと思われます。

成長投資枠で個別株を買う人々

図表2.NISAにおける買付の傾向

成長投資枠の買付内容を見ると、買付額の約半分が株式となっています。この中にはETFやREITも含まれますが、大部分は個別株であると考えられます。

個別株投資は、確かに大きなリターンを狙える可能性がありますが、その企業の株価が割安なのか割高なのかを素人が適切に判断するのは非常に困難です。また、十分な分散投資を行うには相応の資金が必要となります。インデックスファンドなどを通じた分散投資の方が、リスクを抑えながら長期的な資産形成を目指せる選択肢と言えるのではないでしょうか。

驚異的な口座数の伸び

図表3.NISA口座数の推移

2025年6月末時点でのNISA口座数は2,696万口座に達しています。日本の人口が約1億2,500万人であることを考えると、実に5人に1人以上がNISA口座を保有している計算になります。これは驚異的な普及率と言えるでしょう。

ただし、金融機関を変更した場合に口座数がどのようにカウントされているかは、この統計からは明確ではありません。また、口座を開設したものの利用していない人も一定数いるものと想像されます。実質的な利用者数は、この数字よりも少ないでしょう。

新NISA開始で急増した買付額

図表4.NISA口座における買付額の推移

買付額の推移を見ると、2024年にスタートした新NISA制度の影響が一目瞭然です。2024年の新規買付額は17.4兆円に達し、2025年も同等かそれ以上のペースで推移しています。2023年までの旧NISA制度における累計買付額が35.3兆円だったことを考えると、わずか1年余りでその約半分に相当する資金が新たに流入したことになります。

この急増の背景には、新NISA制度の魅力に惹かれて新規に投資を始めた人の増加と、年間投資枠の拡大(つみたてNISAは年間40万円、一般NISAは年間120万円だったものが、新NISAは年間360万円に(成長投資枠とつみたて投資枠の両方をフル活用した場合))という制度変更の両方が寄与していると考えられます。

年代別に見る投資スタイルの違い

図表5.NISA口座数・買付額の年代別分布

年代別NISA口座の分布を見ると、30代から60代の現役世代を中心に、比較的幅広い年代で口座を開設していることがわかります。

興味深いのは、買付額における「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の比率です。若い世代ほどつみたて投資枠での買付割合が高くなる傾向が見られます。これは、若年層では年間120万円のつみたて投資枠だけで十分という人が多いためかもしれません。投資可能な金額が限られている若年層にとって、毎月10万円の積立で上限に達するつみたて投資枠は、無理のない投資手段として機能しているようです。

個別株への投資ニーズがなければ、つみたて投資枠を中心としたNISA活用で十分に資産形成を進められると言えるでしょう。

都道府県別に見る金融機関の選択傾向

図表6.都道府県別NISA口座数

都道府県別の統計からは、証券会社と銀行、どちらでNISA口座を開設しているかの地域差が見えてきます。

全国的には証券会社で口座を開設する人が多い傾向にありますが、大都市圏ほどその割合が高く、地方では銀行の割合が相対的に高くなる傾向があります。これは、証券会社の店舗網の分布や、地方における地銀の影響力の強さを反映しているのかもしれません。

しかし、この傾向に当てはまらない例外も存在します。鳥取県(証券会社割合全国1位)、福井県(同2位)、大分県(同3位)、鹿児島県(同5位)、島根県(同7位)など、大都市圏ではないながら証券会社での口座開設割合が全国トップクラスの地域があります。これらの地域では、特有の要因が働いている可能性があります。その理由は不明ですが、非常に興味深いデータです。

おわりに

新NISA制度は、日本の個人投資家の裾野を大きく広げつつあります。本コラムでは、年初一括投資と毎月積立という異なる投資スタイルの使い分けや、成長投資枠とつみたて投資枠の使い分け、そして地域ごとの金融機関選択の多様性などを統計データから読み解きました。

これから投資を始めようと考えている人は、自分の資金状況や投資経験に応じて、まずはつみたて投資枠から始めてみることをお勧めします。無理のない金額で長期的な積立投資を続けることが、資産形成の王道と言えるでしょう。


参考資料:日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(2025年6月末時点)」

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