皆さんがお勤めの会社には、企業型確定拠出年金制度(以下、企業型DC制度)はありますか。また、過去に勤めていた会社に企業型DC制度はありましたか。
もしも企業型DC制度がある会社に勤めた経験があるのなら、是非このコラムを最後まで読んでください。
企業型DC資産の移管先は5つの選択肢
企業型DC制度がある会社を辞めるとき、企業型DC内の資産はどのように扱われるのでしょうか。その選択肢は以下の5つです。これらのいずれかを退職後6ヶ月以内に自ら選択する必要があります。
- 転職先の企業型DCへ移管(転職先に企業型DCがある場合)
- 転職先の確定給付型企業年金(DB)へ移管(転職先にDBがあり、移管可能な場合[*1])
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)へ移管
- 企業年金連合会の通算企業年金へ移管
- 国民年金基金連合会へ移管(自動移管)
[*1]転職先の確定給付型企業年金が移管を受け入れる規約となっている必要があります。
概ね転職先にどのような制度があるかで選択肢が決まります。人によって選択できないものもあるということです。
最も注意すべきは「手続き忘れ」
そして、最も注意しなければいけないのが、移管手続きを忘れて放置してしまうケースです。もしも退職後6ヶ月以内に手続きをしないと、「5.国民年金基金連合会へ自動移管」となります。「自動移管してくれるなら楽でいいじゃないか。しかも、その後は国民年金基金連合会でちゃんと管理してくれるなら、心配ないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、そう思っていると危険です。
国民年金基金連合会へ自動移管された資産は、まったく運用されずに塩漬けにされ、さらに手数料を引かれ続けます。ただただ確実に減っていくということです。
この自動移管された年金のことを『放置年金』と言います。その名前のとおり、ほったらかされて風化して徐々に小さくなってしまう存在です。
放置年金とならないように、退職時には自ら移管手続きをすることが大切なのです。
驚くべき実態:138万人が自動移管
それでは、手続きを忘れて自動移管されてしまっている人はどのぐらいいるのでしょうか。
国民年金基金連合会から、「iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度の概況(令和7年3月末現在)」が公表されました。その中に、正規移管者数(iDeCoへ移管手続きをした人(上記3)の数)と、自動移管者数(手続きを放置して6ヶ月が経過して自動移管されてしまった人(上記5)の数)の推移を示すグラフがあります。
このグラフより、iDeCoに正規移管した人数と自動移管されてしまった人数が同等であることがわかります。多くの人が手続きを忘れているということです。


出典:iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度の概況(令和7年3月末現在)[国民年金基金連合会]
令和7年(2025年)3月末において、自動移管者数は138万人もいます。かなり多いことがわかります。さらに驚くべきことは、その中の半数近い60万人の資産が0円になってしまっているのです。
ただ運用されずに塩漬けにされ、手数料だけが引かれ続けた結果、0円になってしまった人がこれほどの数もいるのです。非常にもったいない話です。
今すぐ確認し、老後資金を救い出そう
勤めていた会社は、退職後まで手厚くフォローしてくれません。自ら忘れずに手続きをすることが大切です。
企業型DC制度のある会社に過去に勤めていた方で、手続きを忘れているかもしれないと思う方は、是非すぐに確認し、自らの老後資金を救い出してください。速やかに正式な移管手続きをしましょう。


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