マッチング拠出制度の変更が老後資金の準備を変える
2026年4月、企業型確定拠出年金(企業型DC)のマッチング拠出制度が大きく変わります。この変更により、老後資金の準備をより積極的に進められる環境が整うことになりますが、具体的にどのような変更なのか、一緒に見ていきましょう。
そもそも企業型DCとは
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用商品を選んで資産形成を行う年金制度です。運用成果によって将来の受取額が決まる仕組みで、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができます。
大企業を中心に普及が進み、約半数の大企業が導入しています。中堅・中小企業でも導入が広がっているので、あなたの会社にもこの制度があるかもしれませんね。
マッチング拠出制度とは
マッチング拠出制度とは、会社が拠出する掛金に加えて、従業員自身も掛金を上乗せできる制度です。2012年1月から導入されたこの制度により、自助努力で老後資金を積み増すことが可能になりました。
企業型DCを導入している企業のうち、約半数がマッチング拠出制度を採用しています。
現状の制約と何が変わるのか
現在のマッチング拠出には「従業員の拠出額は会社の拠出額以下」という制限があります。たとえば会社が月1万円の掛金を拠出している場合、従業員も最大で月1万円までしか追加拠出できませんでした。この制限が2026年4月1日に撤廃されることになります。

出所:厚生労働省
改正後は、会社の拠出額に関係なく、制度上の拠出限度額の範囲内で自由に設定できるようになります。たとえば会社の拠出が月1万円でも、あなたが月4.5万円を追加拠出することが可能になり、合計で月5.5万円まで拠出できるようになるんです。これは大きな変化ですよね。

出所:厚生労働省
税制メリットを活用しよう
マッチング拠出の最大のメリットは、掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されることです。運用益も非課税で再投資されるため、節税しながら老後資産を増やせます。
ただし、受け取り時には全額が収入扱いとなり、退職所得控除や公的年金等控除などの所得控除が関係してきます。受け取り方法(一時金か年金か)によって税制の扱いが異なり、やや複雑な面もあるため、将来の受け取り時には、最新の税制を理解した上で、受け取り方を慎重に判断する必要があります。
とはいえ、ぜひ積極的に活用していきたい制度です。
マッチング拠出とiDeCoの違いは何?
マッチング拠出と似た制度にiDeCo(個人型確定拠出年金)がありますね。どちらも自分でお金を出して老後資金を準備する点では同じですが、いくつか重要な違いがあります。
税制メリットや注意点は同じ
両制度とも掛金の全額所得控除、運用益の非課税、60歳まで原則引き出し不可といった基本的な税制メリットや注意点は共通しています。
重要な違いは商品ラインナップと手数料
商品ラインナップの違い
企業型DCの商品ラインナップは会社がすでに決めているため、その中から選ぶしかありません。一方、iDeCoではラインナップを見て、利用する金融機関を自分で選ぶことができます。低コストの優良商品を揃えている金融機関を選べるのがiDeCoの強みですね。
手数料の違い
企業型DCでは運営管理手数料などの費用を通常会社が負担してくれます。つまり、マッチング拠出を利用してもあなたが口座管理手数料を払う必要はありません。
対して、iDeCoでは加入者自身が口座管理料や初期手数料を負担する必要があります。金融機関によって手数料水準は異なりますが、一定の負担が発生することは覚えておきましょう。
マッチング拠出とiDeCoのどちらを利用すべき?
まず前提として、マッチング拠出とiDeCoは併用できません。どちらか一方を選択する必要があります。
これまでは、マッチング拠出に「会社の拠出額以下」という上限があったため、さらに拠出したい人はiDeCoを自分で利用するしかありませんでした。しかし、2026年4月からはその制限が撤廃されるため、拠出額を増やしたいという理由だけでiDeCoを選ぶ必要はなくなります。
したがって、2026年4月以降は純粋に商品ラインナップで判断すればよいでしょう。企業型DCの商品ラインナップに大きな問題がなければマッチング拠出を利用し、高コスト商品ばかりの場合に限りiDeCo口座を自分で開設して利用するのがおすすめです。手数料負担がない分、マッチング拠出のほうが有利ですからね。
なお、すでにiDeCoを始めている方は、2026年4月以降、マッチング拠出への切り替えを検討する価値があります。ただし、すでにiDeCo内で保有している資産については、企業型DCに移換するなど考えなければならない点があります。
あなたがマッチング拠出制度を利用できるか判断するステップ
それでは、以下の順序で確認してみましょう。
ステップ1:あなたの会社に企業型DC制度はあるか?
まずは、自社で企業型DCが導入されているか確認してみてください。就業規則や福利厚生ガイド、人事・総務担当者に聞いてみるとよいでしょう。企業型DC制度がない場合、マッチング拠出は利用できません。
ステップ2:あなたの会社にマッチング拠出制度はあるか?
企業型DCがあっても、マッチング拠出制度を採用しているとは限りません。企業型DCを導入している企業の約半数がマッチング拠出を導入していますが、会社の規約で確認してみてください。
ステップ3:商品ラインナップに問題がないか?
会社が用意している運用商品のラインナップをチェックしてみましょう。信託報酬などのコストが高い商品ばかりの場合は、iDeCoを検討する価値があります。低コストのインデックスファンドなどが含まれているかがポイントです。
ステップ4:問題がなければマッチング拠出を活用
上記の条件をクリアしていれば、マッチング拠出をぜひ積極的に活用していきましょう。
月額いくらまで投資できるか?(今回の変更点)
マッチング拠出で投資できる上限額は、あなたの会社に確定給付企業年金制度があるかどうかで変わってきます。
確定給付企業年金制度がない場合
現在(2026年2月時点)の拠出限度額は月額5.5万円です。企業型DCの会社の拠出額とマッチング拠出の合計でこの金額までとなります。
確定給付企業年金制度がある場合
確定給付企業年金(確定給付企業年金、厚生年金基金など)がある場合、月額5.5万円から企業型DCの事業主掛金額および確定給付企業年金制度の水準等に応じた他制度掛金相当額を差し引いた額が拠出限度額となります。
確定給付企業年金の掛金相当額の具体的な金額については、会社の人事・総務担当者または運営管理機関に確認してみてください。
まとめ
2026年4月のマッチング拠出制度の変更は、会社員の老後資金準備に大きな影響を与えます。これまで会社の拠出額が少なくて十分な積立ができなかった人も、制限撤廃により自助努力で資産形成を進められるようになります。
マッチング拠出制度が利用できる環境にある方は、手数料負担がないというメリットを活かして、ぜひ積極的に活用してみてください。ただし、商品ラインナップが高コスト商品ばかりの場合は、iDeCoの検討も視野に入れてみましょう。
一つ注意したいのは、老後資金の準備は確かに重要ですが、無理な拠出で日々の生活が苦しくなってしまっては本末転倒だということです。生活防衛資金をしっかり確保した上で、家計に無理のない範囲で拠出額を設定してくださいね。
まずは自社の制度を確認して、自分に合った老後資金の準備方法を選択することから始めてみてはいかがでしょうか。
なお、月額5.5万円という拠出限度額については、将来的に引き上げられる予定があります。その詳細については、別のコラムで解説する予定です。


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