【コラム】インデックスファンドの名称に惑わされない! 本当に必要な投資信託はコレ1本

コラム
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NISAの広がりと新たな課題

2024年から新NISAが始まり、株式に投資するインデックスファンドを購入する人が急増しています。しかし、いざインデックスファンドを選ぼうとすると、「国内株式」「先進国株式」「外国株式」「新興国株式」といった名称が並び、最近では「先進国株式(除く日本)」や「先進国株式(含む日本)」といった表記も登場しています。投資初心者にとって、これらの違いは非常にわかりにくいのではないでしょうか。

実は、この名称の多様化には歴史的な経緯があります。インデックスファンドが普及し始めた2000年代初頭は「外国株式」という名称のインデックスファンドが多く存在しましたが、投資対象をより明確にするため「先進国株式」といった名称へと変更されてきました。さらに2025年には、eMAXIS Slimシリーズが「先進国株式インデックス」を「先進国株式インデックス(除く日本)」に変更するなど、わかりやすさを追求する動きが続いています。しかし、結果として名称が乱立し、かえって混乱を招いているようにも思います。

よくある疑問

お客様からよく寄せられる質問を見てみましょう。

  • 疑問1:「外国株式」と「先進国株式」は同じなの?
  • 疑問2:「米国株式」と「全米株式」と「S&P500」は同じなの?
  • 疑問3:「国内株式」と「TOPIX」は同じなの?

これらの疑問の背景には、名称だけでは投資対象が判別できないという問題があります。そして「少しでも違うなら、色々買った方がいいのでは?」と考え、必要以上に複数のファンドを保有してしまう方も少なくありません。

重要なのはベンチマーク

そもそもインデックスファンドとは、特定の市場指標(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託のことです。そして、その連動を目指す目標となる指標を「ベンチマーク」と呼びます。

インデックスファンドを理解する上で最も重要なのは、そのファンドが連動を目指しているベンチマークが何かという点です。ファンドの名称ではなく、どの指標に連動するよう設計されているか、その指標がどのような国や地域を含んでいるかを確認することが本質的に重要なのです。

主要な株式指標と対象地域・代表的なファンド

指標名対象国・地域構成国数代表的なインデックスファンド例
MSCI All Country World Index(ACWI)全世界(先進国+新興国)47
(図1)
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド
FTSE Global All Cap Index全世界(先進国+新興国)約50・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
MSCI World Index先進国(含む日本)23・eMAXIS Slim 先進国株式(含む日本)
・たわらノーロード先進国株式(含む日本)
FTSE Developed All Cap Index先進国(含む日本)25・SBI・先進国株式インデックス・ファンド
MSCI KOKUSAI Index(コクサイ)先進国(除く日本)22
(図2)
・eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(除く日本)
・ニッセイ外国株式インデックスファンド
MSCI Emerging Markets Index新興国のみ24・eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
・iFree 新興国株式インデックス
S&P500米国大型株500銘柄1・eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
・SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
CRSP US Total Market Index米国株式市場全体(約4,000銘柄)1・楽天・全米株式インデックス・ファンド
・SBI・全米株式インデックス・ファンド
TOPIX(東証株価指数)日本(東証プライム全銘柄)1・eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
・ニッセイTOPIXインデックスファンド
日経平均株価日本(東証の代表225銘柄)1・eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
・ニッセイ日経225インデックスファンド

図1:全世界株式(MSCI ACWI)の国別構成比率

図2:先進国株式(MSCI KOKUSAI Index)の国別構成比率

出典:MSCI公式データおよび関連資料(2025年3月末時点)

分散投資の落とし穴

複数のインデックスファンドを保有すれば分散投資になると考えがちですが、実は思ったほど分散できていないケースがあります。

例えば、近年よく議論される「全世界株式(オール・カントリー)」と「S&P500」の比較を見てみましょう。一見、異なるファンドに見えますが、図1の構成比率でわかるように全世界株式の約65%は米国株式で構成されています。つまり、両方を保有すると投資資産の大部分が米国株式に偏ってしまうのです。これは真の分散投資とは言えません。

同様に、「先進国株式(MSCI KOKUSAI Index)」も約73%が米国株式です(図2)。「S&P500」と併せて保有すると、結局アメリカだらけのポートフォリオになってしまいます。

このように、複数のファンドを持っているつもりでも、実質的には特定の国や地域に偏った投資になってしまう可能性があります。名称が違うからといって、必ずしも投資対象が分散されるわけではないのです。

ここで、「全世界株式でもアメリカだらけじゃないか」という意見が出るかもしれません。しかし、これは全世界の株式市場における時価総額比率を反映したものです。つまり、世界経済において米国企業が占める実際の規模が大きいということであり、「アメリカに集中投資している」という表現は適切ではありません。全世界株式ファンドは、世界経済の実態を正確に反映した分散投資を実現しているのです。つまり、「全世界株式ファンドの比率からずれている」ことが「偏っている」ということなのです。

投資信託は全世界株式ファンド1本で十分

かつては全世界に広く分散できるインデックスファンドが存在しなかったため、「国内株式」と「先進国株式」と「新興国株式」を組み合わせるなど、複数のファンドを保有する必要がありました。しかし現在は「全世界株式」というインデックスファンドが登場し、さらに、驚くほどの低コストを実現しています。状況は一変しているのです。

このように投資環境が整った現在の日本において、保有する投資信託は全世界株式ファンド1本で十分です。その理由は以下の3つです。

  1. 究極の分散投資が実現できる
    全世界株式ファンドは、世界中の株式市場に投資します。1本保有するだけで、約50カ国、数千銘柄に分散投資ができ、特定の国や地域のリスクを最小化できます。「多くの商品を持つこと=分散投資」ではありません。そもそも投資信託は袋詰め商品ですから、その袋の中に広く分散された商品が入っていれば良いのです。
  2. 圧倒的な低コストで投資を継続できる
    投資においてコストには敏感であるべきです。長期的な運用成果に大きく影響します。圧倒的な低コストの全世界株式インデックスファンドを保有することは最適解なのです。
  3. 自動的にバランス調整される
    世界経済の成長に応じて、各国の時価総額比率は変化します。全世界株式ファンドは時価総額加重平均で構成されるため、経済成長に合わせて自動的に投資配分が調整されます。投資家が自分で配分を変更する手間が不要です。自動リバランスではない場合、自分でリバランスをすることになります。リバランスは「利益が上がっているものを売る行為」です。「もっと上がるかもしれない」「税金を払いたくない」という気持ちが出てくることは容易に想像できます。これらの気持ちがリバランスをすることの邪魔をするのです。自らリバランスができているお客様に会うことはほとんどありません。リバランスが重要であることを理屈ではわかっていても、リバランスは確実に実行することは簡単ではないのでしょう。そのような側面を見ても、自動的にバランス調整してくれることは大きなメリットなのです。

さいごに:もう一つの重要な判断

今回のコラムでは株式に投資する投資信託の話を取り上げましたが、実際の資産運用では、もう一つ非常に重要な判断があります。それは「保有資産全体で、株式に投資する資産の割合をどの程度にするのか」という問題です。

これは「リスク許容度」と呼ばれる概念に関わる話で、年齢、収入、家族構成、投資経験などによって、一人ひとり最適な株式保有比率は異なります。全世界株式ファンド1本でも、投資額が大きすぎれば過度なリスクを取ることになりますし、少なすぎれば資産形成の機会を逃すことになります。

この「リスク許容度と資産配分」については、機会を見て別途コラムで詳しく取り上げたいと考えています。

投資において大切なのは、名称に惑わされず本質を理解することです。全世界株式ファンド1本で、すでに十分な分散投資が実現できています。それ以外の株式ファンドに手を出す必要性は、基本的に低いと言えるでしょう。シンプルな投資こそが、長期的な資産形成の王道なのです。

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