【コラム】ファンドアワード受賞ファンドの落とし穴 -コストの罠

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投資信託業界では、毎年「モーニングスター・ファンド・アワード」や「R&Iファンド大賞」など、複数の評価機関が優秀ファンドを表彰します。金融機関の店頭やウェブサイトでは「受賞ファンド」の文字が躍ります。しかし、これらの受賞ファンドは本当に「買い」なのでしょうか。過去の受賞ファンドを検証してみると、長期的な資産形成を目指す投資家が見落としてはならない、「コスト」と「持続性」に関する意外な実態が浮かび上がってきます。

用語解説 本文に入る前に、基本的な用語を確認しておきましょう。

  • 購入時手数料:投資信託を購入する際に支払う費用(購入時1回だけ支払う費用)
  • 信託報酬:投資信託を保有している間、毎日差し引かれる費用(保有している限りずっと支払う費用)
  • インデックスファンド:特定の株価指数(TOPIX、S&P500など)に連動することを目指す投資信託。市場平均と同じリターンを得ることが目標。購入時手数料や信託報酬が低いものが多い。
  • アクティブファンド:ファンドマネージャーが独自の判断で銘柄を選択し、市場平均を上回るリターンを目指す投資信託。インデックスファンドと比べて、購入時手数料や信託報酬が高いものが多い。
  • テーマ型ファンド:特定のテーマ(AI、環境、半導体など)に関連する企業に集中投資するアクティブファンド

「過去の好成績」を評価する選定基準の課題

ファンドアワードの多くは、直近数年間の運用成績を主な評価基準としています。例えば、3年間や5年間のリターンやシャープレシオ(リスク調整後リターン)などの定量データに基づいて選定される傾向があります。

この選定方法には大きな問題があります。評価期間中にたまたま好調だったテーマや業種に投資するファンドが選ばれやすくなるのです。つまり、テーマ型ファンドやアクティブファンドが受賞しやすい構造になっています。

そして、受賞ファンドの受賞後のパフォーマンスは、思ったような結果につながらないことが少なくありません。

受賞後のパフォーマンスが振るわない理由

では、なぜ受賞後のパフォーマンスが期待外れになりやすいのでしょうか。最も大きな理由は、「過去の成績は未来の成績を保証しない」という投資の基本原則です。受賞時点で好調だったテーマは、すでにピークを迎えている可能性があり、投資家が受賞の知らせを聞いて購入する頃には、高値掴みになってしまうケースも少なくありません。

さらに、これらの受賞ファンドは高コストなものが多いという問題があります。購入時手数料が2~3%台、信託報酬が年1.5~2%程度と、インデックスファンドと比較すると桁違いに高いコストとなっています。

年率1.5%以上というコストは、長期投資において利益を大きく押し下げる要因となります。運よく市場平均を上回るリターンを継続的に出すことができたとしても、そのリターンの多くがコストによって削られてしまうのです。受賞時の好成績も、その後のコストの重みに押しつぶされてしまう可能性が高いと言えます。

過去の受賞ファンドのコスト検証

実際に、過去の受賞ファンドのコストを具体的に見てみましょう。以下は、「モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー」「モーニングスター・ファンド・アワード」の最優秀ファンドのコスト(購入時手数料と信託報酬)です。

2019年 モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー(最優秀ファンド)

部門ファンド名購入時手数料信託報酬
国内株式型情報エレクトロニクスファンド2.2%年1.65%
国際株式型(グローバル)モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジあり)3.3%年1.98%
国際株式型(特定地域)新興国ハイクオリティ成長株式ファンド『愛称:未来の世界(新興国)』3.3%年1.87%
債券型三菱UFJ/AMP グローバル・インフラ債券ファンド<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『愛称:世界のいしずえ』2.2%年1.32%
REIT型Jリート・アジアミックス・オープン(資産成長型)3.3%年1.606%
バランス(安定)型インベスコ プレミア・プラス・ファンド『愛称:真分散革命』3.3%年1.696%
バランス(成長)型東京海上・世界資産バランスファンド(毎月決算型)『愛称:円奏会ワールド』1.65%年0.99%
オルタナティブ型スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド『愛称:ベスト・アルファ』3.3%年1.98%

2020年 モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー(最優秀ファンド)

部門ファンド名購入時手数料信託報酬
国内株式型情報エレクトロニクスファンド2.2%年1.65%
国際株式型(グローバル)ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド『愛称:ロイヤル・マイル』3.3%年1.6445%
国際株式型(特定地域)グローバルAIファンド(為替ヘッジあり)3.3%年1.925%
安定資産(債券・バランス安定)型投資のソムリエ3.3%年1.54%
バランス(成長)型ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド『愛称:クアトロ』3.85%年2.0%
オルタナティブ型ダブル・ブレイン3.3%年2.013%

2021年 モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー(最優秀ファンド)

部門ファンド名購入時手数料信託報酬
国内株式型トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド3.3%年0.759%
国際株式(グローバル・含む日本)型野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)3.3%年1.65%
国際株式(グローバル・除く日本)型ベトナム・ロータス・ファンド『愛称:ロータス』3.3%年2.167%
債券型ジパング企業債ファンド1.1%年0.803%
バランス型のむラップ・ファンド(積極型)1.1%年1.518%
オルタナティブ型ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)3.3%年1.672%

※2022年は実施されず

2023年 モーニングスター・ファンド・アワード(最優秀ファンド)

部門ファンド名購入時手数料信託報酬
日本株式コモンズ30ファンド3.3%年1.078%
世界株式たわらノーロード先進国株式0.0%年0.09889%
債券エス・ビー・日本債券ファンド 愛称:ベガ0.0%年0.902%
REITフィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド3.3%年1.045%
アロケーション三井住友・DC年金バランス70(株式重点型)0.0%年0.264%

2024年 モーニングスター・ファンド・アワード(最優秀ファンド)

部門ファンド名購入時手数料信託報酬
日本株式三井住友DS日本バリュー株ファンド3.3%年1.672%
世界株式eMAXIS Slim 先進国株式インデックス0.0%年0.09889%
債券ブラックロック iインカム1.1%年0.6325%
REITフィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド3.3%年1.045%
アロケーションダイワ・ライフ・バランス300.0%年0.198%

2025年 モーニングスター・ファンド・アワード(最優秀ファンド)

No.部門ファンド名購入時手数料信託報酬
1日本株式One割安日本株ファンド(年1回決算型)3.3%年1.265%
2世界株式eMAXIS Slim 先進国株式インデックス0.0%年0.09889%
3債券NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信販売会社が定める年0.132%
4REITフィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド(資産成長型)3.3%年1.045%
5アロケーションダイワ・ライフ・バランス300.0%年0.198%

2021年までは「モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー」、2023年からは「モーニングスター・ファンド・アワード」と名称が変わっています。選定基準も変わりました。

ポイントは、2021年までと2023年以降で、選出された商品の購入時手数料や信託報酬に違いがあることです。2021年までは特定の期間の運用成果によって優秀ファンドを選出する賞でした。そのため、購入時手数料や信託報酬が高くても受賞しています。しかし、複数年にわたって受賞することが非常に稀であることもわかります。「過去の成績は未来の成績を保証しない」ということです。

一方で、2023年からは、運用成果のみでなく将来の見通しを勘案した評価が組み合わされるようになっています。そのため、購入時手数料や信託報酬が低い商品も受賞しています。2021年までは高コストなテーマ型ファンドやアクティブファンドが選出されやすく、2023年以降は低コストなインデックスファンドも選出されるように変わってきているのです。

「R&Iファンド大賞」は、2021年までの「モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー」に似た評価基準になっているため、今でもテーマ型ファンドやアクティブファンドが選ばれる傾向が高いと言えるでしょう。何らかの賞を受賞したファンドと言っても、選定基準によって選ばれるファンドが大きく変わることがわかると思います。

ファンドアワードの種類と注意点

ファンドアワードには、選定基準によって大きく3つのタイプがあると言えます。

一つ目は、2021年までの「モーニングスター・ファンド・オブ・ザ・イヤー」や「R&Iファンド大賞」などです。これらは専門家による定量・定性評価に基づいて選定されますが、前述のように対象期間の成績を重視する傾向があります。つまり、『過去の成績で決まる賞』と言えます。

二つ目は、2023年以降の「モーニングスター・ファンド・アワード」のように、将来の見通しを勘案した評価が組み合わされるものです。つまり、『過去だけでなく未来も視野に入れた賞』と言えます。

三つ目は、「個人投資家が選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー」(2024年までは「投信ブロガーが選ぶ!ファンド・オブ・ザ・イヤー」)のような、一般の投資家による投票で決まるものです。販売会社の都合が反映されず、低コストで長期投資に適したインデックスファンドが上位に選ばれる傾向があります。つまり、『長期に渡って付き合うのに適していると判断された賞』と言えます。長期で資産形成をしたい人には、最も参考にする価値がある賞と言えるのではないでしょうか。

売る側にとっては「売りやすい商品」

では、「R&Iファンド大賞」を受賞したファンドのような高コストで将来が不透明なファンドが、なぜ売れるのでしょうか。答えは明快です。販売する金融機関にとって非常に「売りやすい商品」だからです。

「○○賞受賞」という肩書きは、投資初心者にとって強力な安心材料となります。「専門家が選んだ優秀なファンドなら間違いないだろう」という心理が働き、多くの投資家が喜んで購入していきます。さらに、高い購入時手数料と信託報酬は、販売会社にとって魅力的な収入源です。低コストのインデックスファンドでは得られない手数料収入が期待できます。

ちなみに、2025年の「R&Iファンド大賞」の受賞ファンドは、最優秀賞と優秀賞を合わせると、なんと200本を超えています。「○○賞受賞」という肩書きを付けることができる商品が非常に多く存在するということです。

つまり、ファンドアワードは投資家のためではなく、販売する側の都合が色濃く反映された仕組みと言えるかもしれません。投資家は「受賞」という看板に安心して購入し、販売会社は高い手数料を得る。このWin-Winに見える関係の中で、長期的なリターンという最も重要な要素が置き去りにされているのです。

投資の王道は「広く分散された低コストなインデックスファンド」

では、私たち投資家はどうすればよいのでしょうか。答えは極めてシンプルです。広く分散された低コストなインデックスファンドを、長期間にわたって積み立てていくことが、最も確実な資産形成の方法です。

例えば、全世界株式に投資するインデックスファンドや先進国株式に投資するインデックスファンドなら、信託報酬は年0.1%以下のものもあり、購入時手数料はゼロのものが多くなっています。年1.5%以上のコスト差は、長期的には運用成績に決定的な影響を与えます。20年、30年という長期で見れば、その差は数百万円、場合によっては1000万円以上になることもあります。

インデックスファンドは、市場平均を買うという極めてシンプルな投資戦略です。これは、経済全体の成長の恩恵を受けるという考え方であり、特別な投資知識や市場予測を必要としません。誰にでもマッチする、普遍的なアプローチと言えます。

一方で、「周りよりも少しでも儲けたい」「市場平均を上回りたい」という欲望に駆られると、テーマ型ファンドや高コストなアクティブファンドに手を出してしまい、結果的に失敗してしまう傾向があります。受賞ファンドという華やかな肩書きに惹かれるのも、この心理の表れかもしれません。

ファンドアワード受賞実績の多くは、過去の栄光にすぎません。それよりも、シンプルで低コスト、そして長期的に市場平均のリターンを確実に得られる「広く分散された低コストなインデックスファンド」こそが、資産形成の基本中の基本なのです。

華やかな受賞の文字に惑わされず、冷静に長期的視点で投資商品を選ぶ目を持つこと、市場全体の成長を信じて淡々と積み立てを続けることが、成功への近道なのではないでしょうか。

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